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――――魔法とは、法を超え、異界の力を人界に顕現させる技術なり――――




      





        ――――神流とは、人を超え、神の流れを持つ者なり――――





  
    
       
          0/









新暦2167年


「魔法」と言う概念が一般にもある程度普及してから50年


その悲劇は起きた。


とある魔法士が創り出した生物の暴走によるバレストリアス大陸衛星都市3つの消滅


これにより世界政府は、魔法士の危険性を再認識し一斉摘発に全力を挙げる事となる。


その僅か1ヶ月後


政府は独立機関である対魔法士組織『ナイツ』を発足


『ナイツ』の目的は『魔法士と魔法に関係する全ての者の消去』である


つまり魔法士と魔法に関係する者に差し向けられた死神の鎌の様なモノ


しかし、その存在は当時の政府にとって厄介な問題となった。


何しろ当時の政府関係者の中には魔具の一つや二つは軽く所持している者が大半だったのだ。


しかし、『ナイツ』の対魔法士戦闘の技術は他に存在する組織と遙かに次元が違い


世界政府としてもそう言った問題には目を瞑るしかなかったのである。


だが、ここで最悪の事態が起きることとなる。


『ナイツ』に所属する一部の人間による世界政府への反乱


まさにこの事件は当時の政府関係者にとって寝耳に水だった


当時、政府でまともに機能する戦力と言えばある例外を除き『ナイツ』しか無かったのだ。


無論、ただ指をくわえていただけでは無い


ほとんど張り子の虎状態だった軍の再編成、僅かばかり残った魔具の使用、秘密裏に確保していた魔法士への協力要請


だが所詮は事が起こった後の善後策に過ぎず


『ナイツ』との初戦は政府軍第7、第4師団の壊滅と言う結果に終わり。


その後も、『ナイツ』は自分たちが回収した魔具を使い、政府の戦力を半分にまで削ぎ落とした。


政府はその事態に際し、政府直轄の特務隊、通称『メビウス』を急遽設立。








だが、これも所詮は善後策――――――――いや、善後策のはずだった。








大勢の予想に反し、この特務隊『メビウス』は各地で展開中の『ナイツ』の部隊をことごとく撃破し


設立から6週間・・・つまり1ヶ月と2週間には反乱の首謀者である『ナイツ』のNo2を捕縛


世界政府に反乱を起こした『ナイツ』の実にあっけない幕切れだった。


以降『ナイツ』は内部編制と規模縮小されると共に情報統括機関『レギオン』へとその名称を変え


その存在も『魔法士と魔法に関係する全ての者の消去』から


『犯罪を犯した魔法士及び不正に存在する魔道具の位置情報』となる。


そして


反乱の際に『メビウス』が回収した魔道具の数々は『メビウス』の手により封印あるいは破壊された


また、このような反乱が起きないように世界政府に抑止力として譲渡した物もある。








その後、政府特務隊『メビウス』は解散し、今ではその資料は詳しく残っていない。


余談ではあるが『メビウス』の全員が『神流』と呼ばれる魔法士とは違った力を持っていたと言うことだ











―――神の流れを持つ者メビウス――――












      前編







       1/







―――バレストリアス大陸中央部・首都グーデルンベル某所







情報統括機関『レギオン』所長室















「・・・・で、どうして俺なんだ?」


向かい合う二人の内、男の方がやる気なさそうに呟いた。


黒髪に少しツリ目がかった鋭い黒い瞳をしている。だが、やる気が無いと言うより眠そうな感じがするため若干その印象は押さえられている。


対してもう一人の人物である女の方は、パリッとしたスーツを身に纏い


男と同じ黒髪を肩の辺りにまで流して、右目には洒落のつもりなのか単眼鏡をつけていた。


いかにもキャリアウーマン、と言ったところか?


「貴方しかいないからよ」


男の呟きに女は落ち着き払った声を響かせそう答えた


「・・・・いいか所長。何で俺なんだ?他にも暇な奴が居るだろうが!」


「確かにそうだけど・・・任務を無事成功させるには貴方が一番確実なのよ?」


男の怒りも何処吹く風、と言うように女は自分のペースを全く崩さない


両者一歩も譲らず互いに睨み合いがしばし続く――――かと思われた。


「解った・・・なら今回は、私が行くことにするわ」


先に折れたのは女の方であった。


彼女はやれやれ、と言った風に首を横に振り席を立つ


そして――――爆弾を落とした。


「あー・・・そうそう。私が居ない間、他の隊員の面倒ちゃんと見ておいてね?それとサボったら5年間は給料70%カット♪」


そう天使のような顔で悪魔の様な言葉を紡ぎ部屋から退室して行く


無論


その言葉を聞いた男は、猛ダッシュで彼女を引き留めた事は言うまでも無かった。






        













「やっぱさ、あれは流石に脅迫だと俺は思うわけだが・・・フラノールはどう思う?」

「別に私は皆さんの相手をする方が楽で言いと思いますが?」


あの後、嫌々任務を(ほぼ強制に)引き受けた男は娯楽室に赴きフラノールと言う少女に愚痴を現在進行形でこぼしていた。


ちなみに少女ことフラノールは、男の方を見向きもせずに何かの機械を操作しているので


端から見れば危ない男が独り言をぶつぶつ言っているのと大して変わりがない


「バカ言うなって。あんな一癖や二癖どころか四癖ありそうな奴らの面倒なんて誰が見てられるかよ」


と、他の仲間が聞いたら間違いなく袋だたきに遭いそうな言葉をのたまった。


「そう言う貴方もその中の一員でしょうに・・・」

「今のはちょっとお兄さん傷ついたよ・・・・って、さっきから気になってたけど何やってんの?」


男の言葉にフラノールは、今までの無表情から一転。微かな笑みを浮かべる


「風の惑星という戦略シュミレーションです」

「その割には何処にもそれらしき画面が無いけど・・・・」


男の呟き通り機械から映し出されている画面には、ただ数字の羅列と訳のわからない記号だけしか映っていなかったのだ。


「それはですね――――――――」

「おっ!!居た居た!」


フラノールの言葉を遮るように声が響き、その突然の乱入者にフラノールは不満そうな表情を浮かべた。


「あれ?アストリアさんですか?」

「いやーやっと見つけたよ・・・もう探したんだからぁ〜」


そう言うとアストリアは持っていた一枚の紙を男の方に突きだした。


「何ですかこれ?」


「さぁ?あたしはこれを君に渡せって言われてただけだしね〜・・・じゃあそう言うことで」


シュタッ、という効果音と共に二人の眼前から文字通り消える


だが、二人は驚いた様子もない。後に訊いた話だが二人曰く「いつもの事」だそうだ。


「・・・・あの何と書かれていたんですか?」


フラノールが不信に思い男に訊いてみるが彼は何の反応も起こさない


ただ紙を見つめ、呆然と言うか静かな怒りを燃やしているというかそんな感じで――――


「あのへたれ所長はぁぁああああああ!!!!!!」


怒声を上げると同時に持っていた紙をグシャッ、と握りつぶし娯楽室から走り去っていった。


あとに残されたのは呆然と佇むフラノールただ一人


彼女は男が握りつぶした紙を拾い取り、紙に書かれている内容を読む





――――ああ・・・・なにかとてつもないような事が起きる予感がします。





ちなみにこの予感は後日的中する事になる


良い意味でも悪い意味でも








     


   









        2/













「そういうわけで今日からお前らと一緒に勉学に励む――――えっと名前なんだっけ?」

「相沢祐一です」

「とまぁみんな仲良くするように」

「「「「「はーい」」」」」

「良し。一限は転入生への質問タイムにするからな」


そう言うと祐一に石橋と名乗った教師は意気揚々と教室から出ていった。


それで良いのか?と突っ込みをいれたいところだが、生憎いまの祐一はこちらへ来る前にフラノールから


身体能力を一般人とさほど変わらないぐらいに制限されている


そのため魂(他の所員に日常的に行っている)の突っ込みが出来ない。


「(突っ込みが出来ないなんて一生の不覚!!)」


そう祐一が思考の海をクロールで泳いでいると、不意にクラスの雰囲気が変わる


まるで獲物を追いかける狩人のような――――


詳しく言えば。そのオーラは男子では無く、主に女子の辺りから出ているようでほぼ全員の目つきが進行形でヤヴァイ事になっていた。


人間の目って発光できたっけ?


再び思考の海を今度は背泳ぎで彼が泳いでいると


トロンベさんに襲われた。


「結構いけるじゃん!!」とか「私のタイプ!」だったり


あまつさえ「私の弟にならない!?」ときたもんだ。


何故こんなことになったのか?


話は今日の2日前に遡る。


















「このへたれ所長!!」


バンッ


男――――否、祐一は雄叫びを上げながら扉を蹴破った。


「あら?何かしら」


正面を目視すれば優雅にティーカップの中の液体を飲んでいる女性の姿


「さっきの書類は一体何だ!!!」


祐一は力任せにテーブルを叩く


「決まってるでしょ?転入届よ」

「だから何で転入!?」

「あら。お姉さんからのささやかなプレゼントが気に入らないのかしら?」

「何が『お姉さん』だよ実年齢はバ――――!!?」







――――しばらくお待ち下さい――――







「冗談はともかく、話を先に進めましょうか?」

「・・・・・はい」


何があったのか検討もつかないが


祐一の顔の大きさが2割ばかり増えているのを見れば何となく解る


「まぁ・・・貴方を学校に行かせたいのはもちろん都合がいいからよ」

「都合・・・ねぇ」


疑いのまなざしを女性に向ける


「今回の目標は複数存在するの・・・一つは学校」

「何?危険な魔法具でも入手したわけ?」

「いえ・・・何でも魔物が出るらしいのよ」

「魔物・・・ね。それでも複数って事はまだあるんだろう?」


祐一は出された飲み物を一口含む


「ええ。こっちは簡単な方ね・・・これが資料」


はい、と手渡された資料を祐一はパラパラとめくっていく


「魔法具の不正使用ね。しかも元政府関係者・・・どこが簡単なんだよ」


資料を読む限り


この政府関係者はお抱えの魔法士が創り出した魔法具を


その魔法士が死亡したにも関わらず政府に届けを出さずに不正使用しているようだ。


あの事件の後


魔法士という存在は全て政府に管理、監視されている。


これは魔法士がテロリストなどに利用されるのを防ぐためでもある


ちなみにこれは魔法士が創り出した魔法具にも言われることで


魔法士は何らかの魔法具を創るために政府の許可が必ず必要となっている


そして、創られた魔法具の所有権は魔法士の死亡後、政府にある。


今回のケースは


元政府関係者がツテで徴用していた魔法士(本来なら個人で魔法士を雇う事は莫大な金銭がかかる)が


創り出した魔法具を死亡後3年も秘匿した


これは政府が定める法律の二級犯罪に相当し


秘匿していた魔法具の引き渡し、並びに罰金もしくは十年以上の禁固がかせられる


「・・・・これだったらすぐに捕まっても良いような気がするけど?」


祐一は資料片手に横目で女性を見る


「あの男かなり性根が腐っていてね・・・裏から手を回して『無かったこと』にしたらしいのよ」

「・・・うわー」

「ちなみにこの話は二年間。まったくこれだから頭の固い役人って言うのは・・・」


「いまさら話を回されても」とか言いながらぶつぶつと静かに怒りを燃やしている女性


これこそが相沢祐一が


バレストリアス大陸首都グーデルンベルの衛星都市スノウフレイクスに赴いた事の顛末であった。




  










        3/















意識がぼやけている


見えるのは真っ白い天井


「(ああ・・・知らない天井だな)」


祐一は少し言うことが利かない身体を起きあがらせる


少し鼻につくのは何かの薬品のようで


辺りを見渡せば白いベットが何台か並んでいる


と、言うことは――――――――


「保健室と言うモノか?」

「そうだよ〜」


どこからかやけに間延びした声が響く


「えっ!?」


声がした方へ振り返れば蒼髪の少女がいつの間にか居た


「い、いつの間に?」

「えー・・・最初から居たけど?」

「そうなのか?」

「うん」


祐一がそう訊くと蒼髪の少女は頷いた。


「ホントにビックリしたよ〜・・・相沢君いきなり倒れるんだもん」

「倒れた?俺が?」

「うん・・・クラスのみんなが相沢君の所へ集まったらいきなり倒れちゃったの」


心底驚いた〜、と再び呟く


「そうか・・・倒れたのか。えーともしかして君が「名雪だよ」・・・へっ?」

「名雪。水瀬名雪」

「あ!・・・名前ね。って水瀬?」

「そうだけど?」

「いや・・・何でもない」


祐一は少し怪訝そうに顔をしかめるが


やがて納得したらしく


「じゃあ・・・水瀬さん」

「何?」

「水瀬さんが俺をここに運んでくれたの?」

「一応私の他にもあと2人居たんだけどね・・・授業がまだあるから」

「・・・水瀬さんは授業受けなくて良かったの?」

「今日、保健室の先生が居ないから・・・・私、保健委員なの」

「へー」


と、しばらく2人が雑談に花を咲かしていると


昼休みを告げる鐘が鳴った。
















放課後















祐一は名雪の誘いを断り、一人帰路につく

そして機関が今回の任務のため、購入した安アパートに辿り着くと上着のポケットから鍵を取り出し――――――――





おかしい。





鍵が開いている


確かに学校へいく前に施錠したはずなのだが・・・・


祐一は腰のホルスターから拳銃を引き抜くと


意識をある領域まで高める


そして、


もの凄い勢いでドアを開け転がるように部屋の中に入り


部屋に侵入しているであろう人物に対して照準を合わせ引き金を引――――――――


「・・・・・って。お前かよ」


照準の先にはちゃぶ台の横に座り、お茶を啜っているフラノールの姿が


「・・・・どうも祐一」

「で?何の用」


そう祐一が訊くとフラノールは一枚の紙を差し出した。


「・・・・なるほどね。だからお前が来た訳か」

「・・・・はい」


祐一はアパートの窓を開くと

酷く小さく呟いた・・・・・。


「本当に腐ってるな・・・・」





彼が握りしめた紙にはこう書かれていた。





魔法士が死亡した後、魔法士の娘を誘拐。人体実験を行ったもよう、これは一級犯罪に相当、今日にでも強制査察を行われたし





そして、被害者の欄には





水瀬秋子





そう文字が書かれていた。














続く









後書きは最後に




2004/03/21  アーティ