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六月、June、水無月――――と言えば梅雨。


その梅雨が終わればもうすぐそこには夏。


何処までも広がるような蒼穹、真っ白い入道雲に蝉時雨。時折吹く風は私の髪を揺らし、頬をくすぐるり遙か空の彼方より降り注ぐ陽光は私を照らしていた。





その陽光の暖かさに身を任せ、過去を回想する。


脳裏に浮かぶのはあの「麦畑」

黄金色に輝く麦がなびき、夕日に染まったそれらは幻想的な風景を私に見せていた。

そして、そこから始まったことは
良い意味でも、悪い意味でも決して忘れることの出来ない――――――――






大切な記憶














〜under the moon And now〜











キィィィィン!


鈍く、しかしそれでいて硬質な金属音が闇に響く。

視界はほぼ全てが闇に閉ざされ、光源は足下を微かに照らす非常灯のみ

あてにしていた月光は、いまやその姿を雲の奥に秘していた。




轟!!!




鼓膜を破らんばかりの大音量。同時に見えない何かが左上腕部を浅く切り裂き、その射線上にあった人工石の壁を穿ち、破砕した。





「――――――――――っち」 軽く舌打ち。そのまま体勢を低くし―――――疾走。





そして、自己の武器を振るい―――――叩き伏せる





ギィィィィィン!!



再び、闇に響き――――――――――気配が踊る。




「!?」



反射的に――と言うより本能が――攻撃の手を寸前でとどめ、大きく後ろに跳躍。









刹那





可聴領域を超えたのだろう


音は無く、ただ水の激流に似た何かがいとも簡単に彼女の身体を木の葉の如く宙に舞い上がらせた。




  



       *   *   *








現状を把握するために辺りを見回す。



酷い有様だった


窓ガラスは割れ、枠は捻れ原型はとうに無く。廊下も至る所に生々しい傷痕が残っていた。





(まぁ・・・気にしないでおこう)


と、自己完結すると剣の柄をきつく握りしめる。


その反動なのか先ほど負傷した左腕からポタポタ、と鮮血が滲み出ていた。


だが、痛みは不思議と無い。



そんな事はどうでもいいのだ




そう




彼女の胸中にあったのは




“眼前の敵を討つ”こと―――――ただそれだけ。









そうして



一つの扉に辿り着く。


普段は立ち入りが禁止されている屋上――と言っても無いに等しい――からヤツの気配

しかも、今までで一番大きい



(勝負をつける気?)


とどめなく不安があふれ出す


だが、彼女はその不安を取り除くかのように首を左右に振った。


そして、どの道自分は前に進むしかない、そう言い聞かせ扉を―――開けた。










風が吹いた。


暦の上では春のはずだが、まだ外気は冷たく鋭利な刃物の如く襲いかかる


こんな事なら脱ぎ捨てた外套を持ってくるんだった。と、嘆いてもどうしようもない




ぎゅっ、と固く柄を握りしめ―――駆ける。



「はぁぁあああああああああああっ!!!!」








構える



狙うは一番気配が濃い箇所



距離が徐々に狭くなる。



そして




月光が闇を照らした。



黒髪が月光に輝く、名は体を現す



月下に舞う


それはさながら美しき剣舞


しかし、その剣舞は観客を魅了するようなモノではなく


魔性を切り裂く死の剣舞


大技は隙が出来やすい


見えない敵の攻撃を、回避回避回避回避回避回避回避回避!!



隙が出来る。


そして、そのまま一刀に切り裂く!!




だが、本能は彼女に囁く――――――「浅い」、と









気配は最初から無かったかのように消えていた。



どうやら逃げられたようだ。



ふう、と息を漏らし剣を鞘に収め


「私は」

彼女――――川澄 舞は空に輝く月を見上げ、小さく小さく呟いた


「私は魔を討つ者だから――――」





        *   *   *





「・・・い。・・ま」

何処かで聞き覚えのある声を聞き、私は太陽の光が入らないようにゆっくりと瞼を上げた。


「佐祐理?」

「そうだけど・・・・どうしたの舞。こんな所に寝転がって」

「――――空を見てた。あと夢とか」

「空?――――ああ、日向ぼっこだね?」


空を見て太陽の光を浴び、一眠り。たしかに言われてみればそうかもしれない


「じゃあ、今日は踊り場じゃなくてここでお昼を食べよっか?」



           *  *  *



「ねぇ・・・佐祐理さん」

俺は唐揚げをつまみながら佐祐理さんに訊いた。

「はい?何ですか祐一さん」

「えっと、今日は何で屋上なんですか?」

そう俺が質問すると、佐祐理さんは見ているこっちが嬉しくなる位に微笑むと

「それは舞に訊いてみてください♪」

「舞?」

「・・・・」

横では舞が卵焼きを、もきゅもきゅとハムスターの如く食していた。

すると、俺の視線に気付いたのか残っていた卵焼きを皿の上に載せ

眩しそうに空を見上げて、こう呟いた




「天気が良かったから・・・かな?」












終わり






後書き


ふと、書き上げたSS2作を見て「これ合体させたらいいんじゃない?」

と、思って出来たのが本作品であります。


色々と忙しいので更新速度は遅めですが


まだ稚拙な文章ですが頑張って(長編の方も)書いていきますのでよろしくお願い致します。












2004/7/11 アーティ