「そう言うわけで俺はこの街から出ていくことにする」




「「「え?」」」



3月の終わり
高校生最後のイベントである卒業式も終わり
彼女達が恋い焦がれる人物は突然そんなことをのたまった。


訳もわからず困惑し硬直する三人

その横で家主である水瀬秋子は、相も変わらずニコニコとその様子を見ているだけ


「祐一はこの街から出ていくの?」


いち早く復帰したのは

彼の従姉妹で秋子の娘である名雪だった。


「ああ。でもそれには色々と訳があるんだ」

「訳?」

「おう、実は絵本作家になりたいんだ」

「それってあたしが保育園の子供達に読んであげてるあれ?」


名雪の横で肉まんを頬張りながら聞いてくるのは

沢渡真琴

一応、この家の居候二号さんである


「そうだ」

「いつから行くの?」

「ん?明日にでも行くぞ?」

「うぐぅ・・早すぎない?」


ちなみに彼の隣で鳴いているのは水瀬家居候三号の月宮あゆ


主にたい焼きを主食とする


「いや、先方さんには明日行くって伝えてあるからな」


ずずずっとお茶を啜る祐一

見るからに老人オーラが滲みでている


「ねぇ・・・祐一君」

「どうした?あゆ」

「帰ってくるよね?」

「もちろん。ここは俺にとって第二の家だからな」



ってちょっとクサかったか?と微笑む祐一



そんな笑みに対して彼女たちはこう言うしかなかった。








いってらっしゃい、と

















   10万ヒット記念SS

  

〜祐一君のちょっと変わった新生活〜

     大地に立つ編
  

















「えーと・・・確かこの辺だよな?」


メモを片手に歩き回る青年こと相沢祐一


だが、探しても探しても目的地にたどり着けない


ちなみに、この道に来るのは実はこれで四回目だったりする(本人に自覚無し)




ふと空を見上げれば

既に空は茜色に染まってきていた、早く目的地を見つけなければ最悪、『野宿』と言うことになる

その辺のビジネスホテルに泊まるという手もあるが

それではお金が掛かってしまう

まだ、バイトも決まっていないのにそんなことでお金を使うのは得策ではない

あくまでそれは最終手段に取っておくことにしよう


「どうしたもんかな〜」


頭を右手で掻きむしりながらメモを凝視する

不意に、視界の角に一人の人物が写った

格好からして女学生

所持している物は通学に使っているだろう鞄と大根がはみ出たビニール袋

おそらく買い物帰り・・・・したがってこの近辺に住んでいるということだ。

祐一はメモを片手にその人物に声をかけた


「あのー、すいません・・・」

「はい、何でしょうか?」


その人物は笑顔で答える


「道を聞いても良いですか?」

「いいですよ」


その人物は初対面の祐一に対し、なんの警戒もせず頷く


「これなんですけど・・・」


祐一は持っていたメモ用紙をその女学生に渡した


「あー・・・はい、そこの角を左に曲がってまっすぐ行けば着くはずです」


そして祐一は女学生からメモを受け取り
丁寧に礼を述べてからその場から離れようとするが――――――


「あっ・・でもそこのアパート、3日前ぐらいに火事で燃えたらしいですよ?」




     *  *  *





「ホントだ・・・・・」


祐一は自分が住むはずであったアパートの焼け跡を見て呟いた

ひとつ幸運だったのが

まだ敷金礼金を払っていなかったことぐらいであろうか?


「これからどうしよう」


泣いちゃだめだ泣いちゃだめだ、僕は強く生きるんだ!!

などとカミングアウトしても状況が変化するわけでもなく

祐一は形容しがたい(例えるなら謎邪夢を食べた時の)表情でその焼け跡を眺めていた。


「あ!やっと追いつきました」


はぁはぁと息を苦しそうに漏らしながら走ってくるのは先ほどの女学生


「あれ?どうしたんだい?」

「もしかして・・・ここに住む予定だったんですか?」

女学生は焼け跡を見つめ祐一に尋ねた

「そのつもりだったんだけど・・・これじゃあね」


祐一は肩をすくめる


「あのー・・・もしよろしかったら私の家に来ませんか?」

「はい?」

「私の家はアパートで、まだ部屋が余ってるんですよ♪」


ニコニコと微笑みながら女学生が言った


「アパート?」

「はい!」


女学生は瞳をキラキラさせこちらを見つめてくる


「じゃあ・・・少し見せてもらえるかな?」

「はい!じゃあこちらです」


祐一が女学生を伴って歩くこと数分

見渡す限りのビル街にやってきた


「こんなところにあるのか?」、と心の中で思いつつも

前を歩く女学生についていくと――――――


「はい着きました」

「ここが?」


隣にいる女学生を見る


「はい♪ここが『鳴滝荘』です」




こうして


相沢祐一の新生活は幕を開けたのであった・・・・・


















後書き

祝10万HIT!!





ども〜アーティです
だってシリアス書いてばっかりだと
ほのぼのを書きたくてしょうがないのですよ!!(力説)
とまぁ・・・それはさておき
このSSは何とクロスオーバーしてるか解りますかねぇ?
恐らく
知っている方は結構居ると思います。


では〜、10万HITおめでとうございます!





2004/03/11 アーティ