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変わらない日常


その中を人は流されるように生きる


時にはその流れの中に幸福を見出す


しかしやっと掴んだ幸せも


ささいなきっかけでガラガラと音を立て崩れていく


そう


まるで


初めから


そんなものは


無かったかのように














〜黒狼〜











第六幕











うららかな陽の光が窓から射し込み眠気を誘う時間


名雪は暖かい陽気につられ


今にも寝てしまいそうであったが


寝てしまうわけにもいかないので少し頬をつねった





――――――痛い





ほんのり紅くなった所をさすりながら、ちらっと横へ目線をずらす


そこでは友人が真面目に教壇上の教師の話を聞いていた


更に目線をずらすと


もう一人の友人が教科書を立たせて寝ている


いつものと変わらない日常


朝(がんばって)起きて、笑ったり、泣いたり、怒ったり、好きな人のタイプの話をしたり


そんな日常


それが絶対不変なモノであると名雪は思っていた


そう、ここまでは











          *   *   *











「ん?」


学院の正門の脇に建っている詰め所で、警備員の青年は欠伸を堪えながらそう言葉を漏らした


この仕事に就いてもう三年も過ぎている


学院に近寄る怪しい人物を追い払ったり


登下校する生徒(女性限定)に挨拶したり


おそらく今回のお仕事は


前者の不審人物を追い払う事だろうが・・・・


青年はため息を漏らしながら


よろよろと近づいてくる怪しい人物に声を掛けた


「すいませんがここから先は学院関係者が以外立ち入り禁止となっております」


言っている言葉は丁寧だが、語気は「力づくで排除します」と言わんばかり


大抵のヤツはこれで帰る


今回もそうだろうと青年は踏んだ





だが





「・・・・・・」


反応が無い


無視しているのかは解らないが抵抗しようとするのなら


本当に力づくで取り押さえなければならない――――――


「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ――――――!!!」


嗤う、まるで壊れた様に


「何を嗤って――――――!?」


ズンッ!!


何か音が響いた


何だろう?


青年は音がした方向へ視線をずらす


そこには


腕が在った


その腕は何故か彼の身体に生えていた


ゴキュッ!


『何か』が破砕した音


男が手を抜き放つと


噴水の様に鮮血が空へと舞う


「え?」


そしてそのまま彼は地面へと倒れ伏した。











         *   *   *











「何かあったのかしら?」


学院のとある教室


そこに美坂香里は居た


廊下を方を見ると、教師やら警備員が右往左往している姿がよく解る


まぁ・・・・自分には関係の無いことだ


そう香里は思考完結し、読書に励む


「おい、美坂」


北川に声を掛けられる


「何?北川君」

「今、先生達の話を少し盗み聞きしたんだがちょっと拙い事になってるらしい」

「拙いこと?」


香里は読んでいた本を閉じるとそう聞き返した。


「ああ。何でも得体の知れない男が学院に侵入して正門の警備員を殺したらしい」

「――――――その事を知っている生徒は?」

「いや、まだ居ないはずだ。で、どうする?」

「今はまだそうと決まったわけではないわ」


動くべきでは無い、そう香里は判断する


「・・・・・ならいいけどな」


がしゃぁぁぁんっ!!


突然、教室内に何か音が響いた


音は何かの拍子で落ちた花瓶の様だった


とりあえずそれは良い


問題はその横で胸を苦しそうに押さえている少女――――――


水瀬名雪の事だった。


「名雪!?」


香里は驚いた様に声を上げ名雪に近寄る


「――――――北川君、私はこの子を医療室に運んでいくから」

「・・・・・俺は連絡しておけば良いのか?」

「ええ、お願い・・・最悪一番拙い事になるわよ」


そう呟きを残し


香里は教室から居なくなった。











    *   *   *














そうここは文字通り海だ


アカイアカイウミ


壁は紅く染め上がり


廊下は紅いモノで浸されている


その海を泳ぐモノが居た


いや泳ぐと言うのは語弊だろう


ソレらは泳ぐと言うより浮かんでいる


浮かんでいると言うより動かないと言った方が正しい


そうだ


この海で生きている存在など居ない


在るのは


魂というモノが解き放たれ


その後に残る


物言わぬ塵のような容器のみ


その塵は徹底的に分解され最早、原型など既に無くしている


かろうじて解ることはこの塵の様な欠片が


かつて人間と呼ばれていたモノと言うことだけであろう











「・・・・・・・・・・」


男は既に異形の存在―――魔族へとその身を堕としていた


人間としての理性など最早消失し


在るのは、本能のみ


あの綺麗な蒼髪の少女をめちゃくちゃに壊すことだけ


魔族は辺りにかろうじて原型をとどめていた頭を掴むと


力まかせに引きちぎった


同時に中に詰まっていた脳漿が


どろり、と流れ出しそれを足下へぶちまけられる。


「真っ赤なウミィイ!!!」


奇声を発する魔族


そこへ一陣の風が吹く


「どう、楽しんでる?」


魔族のほぼ真正面にその少女は文字通り突然現れた。


金色の髪を左右の頭で括っている


俗に言うツインテールと言うヤツだ


「楽しいぃいいよぉぉぉ!!貴方もオヨギを教えましょうかぁ?」


醜く嗤いながら首を傾げる魔族


その姿は見ていて酷く恐怖を誘う


「嫌。だって貴方、教え方下手そうだしね」


「イッショニィ・・・・泳ごうよぉぉぉおお!!!!」


「しつこいのは嫌われるわよ!!『風砕』」


ドン!!!


少女へ飛びかかった魔族は


物理法則を無視し後ろへ加速すると


そのまま窓を突き破り校庭へと落ちる


魔族に続いて少女も壊れた窓から跳び


空を駆け――――――


「『聖弓』」


突き出された両手からは一本の光条が一直線に魔族へと奔り


魔族の躯を貫いた


魔族はぽっかりと空いた自分の腹を見つめると


愉快そうに「ケタケタ」と嗤い


躯を再生させる


だが


『業炎』


続いて少女の振るった腕から


膨大な量の炎が生じ


一瞬にして魔族を飲み込み灼き尽くす


炎が収まった後にはただ灰が残るのみ


「ふん」


それを一瞥すると後ろを振り返る


「・・・・まだ、楽しめそうね」


その先には先ほど少女が屠った魔族とは別の魔族が


辺り一面を埋め尽くしていた・・・・・・・・・・




















続く











後書き


少し時間がたちましたが黒狼第六幕をお届けします

うむう・・・・ちょっとグロかったかなぁ・・・・(汗)

それではまた次回で



2004/02/21  アーティ