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聖王国の聖騎士団本部の一室にその女性は居た。


長い青髪を三つ編みにして纏めて右肩にかけ流している


確か秋子と呼ばれていた人物のはずだ


だが今の彼女は聖騎士団副団長としての秋子


一児の母としての秋子


そのどちらでも無く


ただ愁いに満ちた表情だった。


彼女は机に置いてある写真立てを手に取った。


一つ目は、最近撮った娘との写真


二つ目は、今は亡き夫との写真


そして最後の三つ目は幼き頃の彼女と


彼女を挟むかのように立っている人懐っこい笑みを浮かべた少年少女


彼女は思った


あの時が一番楽しい時期だったのではないか?、と


彼女はその写真立てを懐かしそうに触れるとこう呟いた。


「・・・・兄さん」











〜黒狼〜











第四幕











薬莢はもの凄い速さでその銃身に吸い込まれていく


その速さに比例し


銃身から雨の様に弾丸が撃ち出されていった。


祐一は目を僅かに動かし


残りの残弾をチェックする


(・・・・まずいな)


見れば残弾はあと50秒も撃っていれば尽きる状態にあった


ちっ


そう舌打ちをすると


銃撃を一旦やめ


懐から何かを取り出す


彼はその何かのピンを歯で抜くと


銃弾の雨で動きを止めていた巨人へと投げつけた


刹那


どぉぉおぉおおん!!


轟音


彼が投げつけた何かは一瞬にして周囲を灼き尽くす


「・・・これで時間は稼げたかな」


舌を出し上唇を舐める


だが祐一の手元は未だにその煙の向こうを警戒していた。


案の定


煙が晴れたその場所には無傷の巨人がそびえ立っている


「・・・・ったく。あゆまだか!?」


そう弱音なのか怒っているのかイマイチ解らない言葉を言った後


彼は残弾が残っているガトリング砲を地面に捨て


代わりに腰から下げていたライフルを取り出す


「・・・・さて。改めて始めようか?」


そう不敵な笑みを浮かべ呟いた。











  *  *   *











どぉぉおおぉぉおおん!!


街の何処かで爆発音が断続的に響いていた


おそらく彼――祐一があの巨人と戦闘を開始したのだろう


その音を聞いて


彼女――あゆは、はぁっ・・・と言う息を漏らし呟く


「全く・・・勝手に始めちゃうなんて身勝手だよ」


肩には彼女の身長を遙かに超える高さの銃を背負い


それをモノともせずに家と家の間を軽く飛んでいく


まるで翼が生えたような軽さであった。


やがてこの街でそれなりに高く


一番街の広場が確認できる建物へとやってきた


広場では祐一が巨人と激しい戦いを繰り広げているようだ


あゆはそれを確認すると背中のモノを降ろす


――――対魔族戦闘用長距離狙撃銃


別名


ジオグライヴ


大戦以前に製造され今では聖王国内の博物館で埃を被っているのが最後の一挺


――現代の学者達はこれが何の用途に使うのか解らなかった


ただやけに不格好な銃


おそらく失敗作と思いこんでいるに違いない――のはずなのだが


それはかなり使い込んであるらしく所々に細かい傷があった


あゆはそれを二脚に取り付け


微調整をする


風の動き


巨人の動き


祐一の動き


銃の反動


その他諸々の情報を頭の中に詰め込み照準機を覗く


夜のため視界はかなり悪い


だがそれすらも今の彼女には関係なかった


集中に集中を重ね


辺りには自分と巨人しか居なくなる


彼女は引き金に人差し指に掛け――――


ドンッ!!


銃声


ただしそれはあの狙撃銃ではなく


彼女の持つ拳銃からその音は響いた


「・・・・誰?」

「その言葉は是非撃つ前に言ってもらいたかったな」


暗がりから一人の男が現れる


その姿は


聖王国の喫茶店で紅茶を飲んでいた紳士風の男性に違いなかった


その男は親指で何かを弾く


弾かれたそれは音をたてあゆの足下まで転がってくる


銃弾


それは先ほどあゆがこの男に撃った弾に他ならなかった


と言うことはこの男は銃弾を素手で掴んだと言うのだろうか?


あゆの身体に戦慄が奔った。


「・・・まぁそう固くなるな。24年ぶりの再会だ、もっとリラックスして欲しいモノなのだがね」

「――――銀!?」

「ご名答。もっともその呼び方は余り好きではないが」


無言のままあゆは下げていた銃を銀と名乗った男に向ける


「・・・・あなた達は一体何を起こそうとしているの?」


人差し指を引き金に掛ける


「・・・・残念ながらそれは私の口から言えることでは無いな」

「・・・・無理にでも聞かせてもらうよ」


更に引き金を絞る


「・・・・聞かなくとも既に答えは知っているはずだ」

「・・・・まさか!?」


あゆの表情に驚愕の色が混じる


「・・・・・じゃあまた何処かで」

「――――まっ!?」


男は出現した時と同様


気配もなく消え去った。


いや


最初からここに存在していなかったのかもしれない


「・・・・・あいつらはまたあんな事をしようと言うの?」


僅かに口から絞り出した声は


誰にも聞かれることもなく


空へと消えていく











     *  *  *











「いやぁぁぁはぁぁっ!!」


雄叫びと同時に引き金を絞る


連続した銃声


撃たれた弾丸は巨人の眼前でその運動を停止し地面に落ちた


「ったくホントにキリが無いな!」


そう弱音ともとれる呟きを漏らすが


表情は生き生きとして


まるでこの戦いを楽しんでいるかのようだった


懐から手投げ弾を取り出し


ピンを抜き投擲


轟音


同時に 熱を持った風が祐一の頬を撫でる


「・・・・・・・」


今ので通常武装は全て尽きた。


あくまで通常武装のみだが


後は接近戦用のナイフのみ


巨人は祐一の攻撃が止まってすぐに


彼に向かって歩き始める


人間を模したであろうその表情には


漠然だが


怒りのようなモノが見てとれた





次の瞬間





巨人の腹に大きな穴が穿たれ


一瞬置いて


何処からか銃声が響く


おそらくあゆの援護射撃だろう


しばらくは彼女が時間稼ぎをしてくれるはずだ


祐一は背中から新たな武装を取り出す


それは長大な機械


綺麗な流線型


武器と言われるよりも一個の芸術品と言っても差し支えないほど


ある種に感じられる独特の威圧感がそれにはあった。


じゃこ


濁った金属音


あらかじめ装填されている呪文書式板の呪文書式をなぞるように滑る


無音詠唱


同時に内蔵されている呪式構築機関が唸るような稼働音を響かせた


大気に満ちる呪素を吸収、魔力に変換しているのである


その力はある方向性に定義され、収束する


術者の撃発音声をトリガーとして現実世界に接続


世界の全法則に強制干渉を行い


術者の意思を世界における最優先事項とする





これこそが





魔法





祐一はそれを巨人へと向け叫ぶ


「これは挨拶代わりだ受け取りな!!<ジオインパクト>!!!」


そして強烈な爆炎が巨人に襲いかかった。


爆炎は巨人の不可視の防護壁をあっさりと貫く!!


命中


巨人は苦悶の叫びを上げる


更に


「<ジオインパクト>!!!」


祐一の容赦のない追撃


巨人はその圧倒的な熱量に押され


その大部分が灼け、炭化していく


がぁぁぁああぁぁああっ!!


巨人が叫ぶと同時に白く輝く球体が虚空より現れ


その一つがもの凄い速さで祐一に向かって撃ち出された


「ちっ!!」


舌打ちをしながら後方へと跳ぶ


自身の身長よりも大きな機械を持っているとは思えない程の軽やかな動き


球体は彼が一瞬前まで居た場所を貫き


その先の地面を灼き抉りながら近くの建物を消滅させる


熱と衝撃のせいか空が唸っているように思えた


そして残った球体が次々と撃ち出され、彼に追いすがる


触れれば必ず死ぬであろうその球体を


一発


二発


軽やかに動いて回避


外れた球体は周囲に破壊をまき散らした


「当たるか!」


そう吐き捨てると


じゃこ


三度、濁った金属音


「我、神護の狼たる汝の名に於いて魔を滅する者なり!!」


補助詠唱


機械の先端の虚空に三つの白い輪が発生した。


白い光で描かれた三つの二重の輪達は、右と左にそれぞれ一定のスピードで回転しながら


複雑な幾何学紋様を内側に描き出す





――――――――魔法陣





かつてそう呼ばれていたモノ


「・・・・・じゃあな。――――唸れ!!<セイクリッドティア>!!!!」


瞬間


三つの魔法陣から現れた白い光条は


互いに絡み合いながら


巨人――――魔族に向かって虚空を迸り・・・・


轟音


閃光が辺りの景色を真っ白に塗りつぶしていった・・・・・・・。

















続く

















後書き


祐一君大活躍〜♪

さてさてこの『黒狼』も第四幕となりました

みなさん

感想いつもありがとうございます

次回から

インターミッション的なお話が二回ほど続きます

事後処理と言うモノです

それでは次回で





2004/01/27