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聖王国にある


聖騎士団本部


そこの隣で営業している喫茶店「百花屋」


この喫茶店は男性にも女性のも人気があり


いつも人が絶えない


だが、今は平日の昼を少し過ぎた時間のせいか


珍しく人もまばらのようだ。


「・・・・ふむ。いい葉を使っているようだな」


カップに少し口をつけ惜しむように飲む紳士風の男


「私はこういう大衆向けの店はあまり好きではなかったのだが、この店は好きになれそうだよ」


また一口紅茶の入ったカップに口をつける


「どういうつもりだ?」


低く押し殺したような声 


その声は紅茶を飲んでいる紳士風の男の後ろから響いてきた。


「なんのことかな?」

「とぼけるな。なぜ会合の場所をここに選んだ?ここは聖騎士団本部の隣だぞ!?」

「だからこそだよ・・・・こんな人目につく場所でこんな危ない会話をする者など滅多にいないだろう?」


「ちっ」


紳士の後ろに座る人物は軽く舌打ちをする


「まぁいい・・・・本題はジュライシティの事だ」

「ああ・・・・あそこね」


紳士は今思い出したかのように呟いた


「あれはやりすぎだ。住人を全員消してしまっては陽動の意味は無い」

「そうかい?良い考えかと思ったんだが」


男は深く息を吐く


「我々はお前が大戦中の魔族を復活させるとは思わなかった・・・・おかげで街に潜伏していた同志も死んだ!」

「・・・もう少し落ち着いたらどうだ?そんなに焦ると怪しまれるぞ?」


男は咳払いをすると再び席に座る


「・・・・我々が貴様に求めているのは聖騎士団に対する陽動だ。それ以上でもそれ以下でもない」

「解ったよ。もう一度ジュライシティで事を起こしてみよう」

「それでいい」


そう男が言い放つと席を立つ


男は大通りの人混みに紛れ消えていった・・・








後に残るのは紳士一人のみ


紳士は残りの紅茶を飲み干すと


言葉は吐き捨てた。








「・・・・・屑が」




















〜黒狼〜





   第二幕














「すいません・・・・乗せていただいて」

「いやなに別にどうってことないさ・・・・なぁ?」


そう運転している男は助手席に座る少女に同意を求めた。


「うん!人数が多い方が旅は楽しいからね!」


はしゃぐ少女


「そういえばまだ自己紹介をしてなかったな」


男が運転しながら隣の少女を指さし


「これがあゆあゆ。主な栄養源はたい焼き」

「違うよ!・・・・えーっと初めましてボクの名前はあゆだよ!」

「あゆちゃんでいいかな?」

「うん」

「じゃあ今度はこっちね?私の名前は如月 真宵。それでこっちは川澄 舞」

「・・・・・よろしく」


相変わらずの無表情で舞が呟く


よく見れば無表情ではなく


うっすらと笑っているのが見えた


「えっと・・・舞さんに真宵さんだね?」


あゆの言葉に二人揃って首を縦に振る


「ちなみに俺の名前は祐一だ」





「知ってるよ」

「へぇ」

「・・・・聞いていない」





その後


思いっきり落ち込んだ祐一を元に戻すために


三人が力を合わせたことはこの際置くいておくことにする











    *   *   *











やや日が傾いてきた時間


代わり映えのしない道もそろそろ終わりを迎えようとしていた。


「そういや聞いてなかったけど行く場所はジュライシティでいいんだよな?」

「はい。そうですけど・・・・よくわかりましたね?」

「ん?だってそりゃあ・・・今ジュライシティは危険とかそういう噂を昨日聞いたものでね」

「・・・・(もうそんな噂が?)」

「どうした?」

「いえ何でもありません」


思考にふけっていた頭を元に戻す


「・・・・っと・・ここでOKです」


キィーッと車が音をたてて止まる


「ほら!舞おきなさい!」


そう言って後部座席で寝転けて居た舞を叩き起こす


無論手刀で


「・・・・痛い」

「はいはい解ったからさっさと降りる!」


そう言って無理矢理、舞を車から引きずり降ろし


肩に担ぐ


「それではありがとうございました!」


頭を下げジュライシティへと続く道を歩く二人


(まぁ・・・若干一名は引きずられているようだが)


やがてその姿が見えなくなると


祐一は無言であゆをたたき起こす


「起きろあゆ」

「・・・・・まだ眠いよ〜」

「仕事だ」

「!?」


だらけていたあゆの雰囲気が一瞬にして変わる


「・・・・どうだ?」


何も聞かずただ結果のみを聞く


「うん、感度良好・・・っと反応確認。おそらく数は一体だよ」

「自然発生したものか?」

「ううん」


あゆは首を横に振る


「違うと思う、四、五日前に干渉された形跡があるから・・・このやり口は銀だね」

「奴か・・・・感じからして本体では無いようだがな」

「ボク達と同じ方法を使っているのか、中継点を使っているのかは解らないけど・・・」

「どちらにしろ奴の世界に干渉するための人形に過ぎない・・・・準備は?」

「いつでも」

「・・・・・・・仕掛けるぞ」

「わかったよ」


そう言うと二人を乗せた車は何処かへ消えていった・・・・。











      *   *   *  











      どのくらい時間がたったのだろうか?





太陽は既に落ち


辺りには深淵の闇――――夜


申し訳程度に街灯がほのかに光ってはいるが


この光量ではとてもこの闇を払うことはできない


「・・・・ここ異常なしっと」


街灯の明かりの下


聖騎士団の高位に属する者に与えられる外套を着込んだ少女――――真宵が呟く


「・・・こう何にもないと退屈すぎるわね」


真宵達聖騎士団の面々はこの街で起こった謎の調査中であり


夜となったため今はその活動をうち切り


こうやって街に異常が無いか警邏しているのだ


「・・・・真宵」

「あれ?舞そっちはどうだった?」

「特に異常は無かった・・・そっちも?」

「その通り。猫の一匹も居なかった」


本当の事だ


街の何処かに絶対いるであろう


犬、猫でさえもこの街には居ないのだ


まるで何かに存在を消されたかのように


「・・・・でも暇ね〜・・・こう何もないと」

「何か出たら困る」


壁に背中を預けたまま目を瞑る舞


「でもさ・・・私達が来たんだから、こう何かあって――――」


真宵の言葉は最後まで紡がれることは無かった





何故なら


大気を震わす存在があったから


おそらくは人の悲鳴


今は住人が居ないので、つまり聖騎士団の団員ということになる


それに


何かの雄叫び


「「!?」」


二人は駆けだした


音が響いてくる方へ


そして


二人が駆ける間にも


悲鳴は容赦なく二人の鼓膜を震わせていた・・・・・。











    *   *   *











るぐぅるおおおおおおおっ!!





幾つもの声が重なり合ったような複雑で分厚い響き


獣の遠吠えにも似た、しかし明らかに違う何かを含んだ声


同時に


一人の男性団員の両の膝が、ずれた


「なっ――――!?」


固定が甘くて外れてしまった人形の部品のように


膝からずるりと前へ滑る


「ぎゃぁぁぁぁぁあああああ!?」


転がって、のたうち回りながら絶叫する


膝の断面からは思い出したかのように鮮血が吹き出す


巨人が歩み寄る


それは濁った四つの眼球を哀れな犠牲者に向けた


「ああああああああああああっ!?」


団員は恐怖に打ち震えながら


いつの間にか手にしていた聖騎士団支給の拳銃を巨人の頭に突きつける


「あああああっ!!!!」


言葉にならない叫びを発し


引き金を引いた。





一発


二発


三発


四発


五発・・・・・・・・





繰り返し撃ち続ける


ふと、引き金に掛かっていた指がその動きを止めた。


巨人の顔にできた幾つもの弾痕から流れ出た血が


地面に滴り落ちる前に止まっていたから


決して傷口が閉じた訳ではない


むしろ、みちみちと音を立て開いていく





そして――――





眼が生まれた


口が生まれた





眼は団員を蔑むかのように見つめ


口は愉しそうに嗤う


ついには


巨人そのおおきな口を盛大に開き








咀嚼した。











    *  *  *











辺りには眼を背けたくなるような光景が広がっていた


聖騎士団の制服がこびり付いた腕


中途半端にもがれた脚


苦悶の表情を浮かべたまま動かない首


さらにはぶちまけられた体液と臓器


眼前には


子供が粘土細工で人間を作ったような


出鱈目で不細工な造形の巨人


舞は吐き気を感じながらも声を張り上げた。


「全員下がれ!!」


ドンっ!!


踏み込み


そしてそのまま抜刀


しゃゃゃゃゃん!!


鞘走りの音


「斬」


閃光が奔る


その閃光の軌跡が通る先には巨人の右腕


ザンッ!!


巨人の腕が宙に舞い上がり――――


「真宵!!」

「解ってる!」


叫ぶように答え跳躍


こちらも既に抜きはなった剣で巨人を脳天から股間へと一太刀で斬る!!


ズンッ


巨人の倒れる音


「殺った!?」

「・・・・・まだ!!」


舞は剣を構えたまま転倒した巨人を


微動せずに睨む


転倒した際に巻き起こった土煙が晴れていく


そこには何事も無かったように起きあがる巨人


「効いてない!?」

「・・・・みたい」


巨人と二人の対峙は続く


「隊長!!!」


一人の団員が声を上げる


「こっちの事は気にしない!あんた達は――――っ!?」

「真宵!!」


ギィィィィィン!!


火花が散る


剣を使い受け流すが


あまりの力で剣にヒビが入る


「くそっ!!」


どぉぉぉぉん!!


間一髪避けると、 巨人の振るった左腕はその先にあった壁へと突き刺さった


「腕が伸びるなんて冗談きついわね・・・・・」

「・・・・今度はこっちから。全力で行く」

「あれを使うのね?OK・・・・やってやろうじゃない」


そう呟くと二人は持っていた剣を収め


腰から剣の様な長い道具を取り出す


刃は無くただ丸みを帯びている形


柄の周辺は何かを装填する様なスリット


二人は腰のポーチからカード状のモノを柄のスリットに装填する


がちゃ


金属音


同時に何かが動く音が柄より響いてくる


「・・・・・・」


装填したカード状のモノに刻まれている


呪文書式を読み込み、無音詠唱する





キュイィィィィィン・・・





柄の部分が先ほどよりも高い音を奏で


そして


「行くわよ。舞!!」

「・・・・・・」


無言のまま頷く


「「機剣発動!!」」


構えた剣の様なモノは


その刀身が白く煌めき辺りの闇を払う





――――魔ヲ絶ツ剣――――





「「我!ここに神の名において魔を絶つ剣を持つ者なり!」」


補助詠唱


そして


撃発音声と共にその刀身が更に煌めいた


             「「<セレブレイド>!!」」


刀身の煌めきは頂点に達し


巨大な光はその大きさを増大させ・・・


「・・・・・参る!」


舞が走る


同時に巨人の正面に靄がかかったような気がしたが構わず踏み込み――――


「砕!」


きぃぃぃぃぃぃぃぃぃん!!


セレブレイドの光の刀身と巨人の何かが拮抗し合う


舞は無理せず後方に下がった


「今度はこっちよ!!」


舞の後ろから真宵が飛び上がる


巨人の真上


今からでは腕を動かすよりもこっちの武器の方が速い


勝利を確信し微笑む











るぐぉぉぉぉぉ!!


巨人が吼えた。


そして巨人と真宵の間に紅い火球が出現し――――


「!?」


爆ぜた。











  続く

















後書き


戦闘シーンというのは難しいものですね
次回は
祐一君大活躍の巻


2004/01/21 アーティ